東海大学農学部 応用植物科学科 教授 阿部淳 委員 このコラムをお読みのかたにも、熊本地震でご自身あるいはご親族が被災された人が多数いらっしゃると思います。心よりお見舞い申し上げます。私が勤務する東海大学農学部(南阿蘇村)も、大きな被害を受け、将来ある3人の若者が命を奪われるというたいへん悲しい事態となりました。数百名の学生がアパート・下宿が損壊して住まいを失っており、そうした事情も踏まえつつ7月の講義再開に向けて努力を続けているところです。 さて、この震災では熊本県の基幹産業ともいうべき農業・観光業も大きな被害を受けています。出荷できずに廃棄せざるを得なかった野菜や牛乳も多く、イチゴ狩りなどの観光農園もゴールデンウィークの売り上げがなくなりました。これから農繁期というタイミングで、温室・畜舎の損壊、用水路の破損などで、この夏の生産に取りかかれなくなった農家さんも少なくありません。農業の被害額は1,000億円を超えると報道されています。 そうしたなかで、農業ボランティアに来てくれる人がいたり、被災地の農産物販売に取り組むお店があったりと支援の動きがあります。農家さん自身も、夜は避難所や庭のビニールハウスなどで生活しながら農作業を始めたかたや、苗作りを仲間に委託して、なんとかこの夏の栽培をしようと努力されているかたが多数いらっしゃいます。こうした時こそ、地産地消。熊本の元気を取り戻すためにも、県産の農産物をご購入頂ければ幸いです。 地産地消といえば、私が住む大津町では、農協(JAきくち)の直売所が、スーパーよりも早く営業を再開し、野菜・食品などの販売を行っていました。輸送網・流通網が分断されがちな災害時において、地元の農家さんが自らの判断で農産物や自家製の加工品を持ち込む直売所ならではの柔軟性・機能性が発揮されたと言えるでしょう。こうした面からも、地産地消を見直したいと思います。 |