くまもと食・農ネットワーク会員や当サイトをご覧の皆様に、くまもと食・農ネットワーク運営委員の、日頃の地産地消に関する活動や考えをご紹介することで、皆様の更なる地産地消活動への一助にしていただくため、当ネットワークの運営委員や関係者によるリレーコラムを掲載しています。
第80回目は、熊本市植木小学校の学校栄養士 河野慶子さんです。
『冬瓜から思うこと』
学校給食では季節を感じられる食材を積極的に取り入れるように日々努力をしている。生の筍やグリンピース、とうもろこしやゴーヤなどなど。グリンピースやとうもろこしの場合、小学生にさやむき、皮むきをさせ、旬の野菜のにおいや感触を体験させることも積極的に行っている。
先日、給食に冬瓜を使った。みなさんは、冬瓜の旬をご存じだろうか?食や農に携わる方には大変失礼な質問かもしれないが、正解は夏。子どもはもちろん、大人の中には『冬』が付くから旬は冬だと勘違いしている場合が多い。…というか、そもそも旬を考える以前に、冬瓜という野菜の存在を知らないことも少なくない。そこで今回、冬瓜を給食で使用するにあたって、学校に実物大の冬瓜の写真と名前の由来などを説明したポスターを掲示し、更に冬瓜そのものをゴロンと展示した。約5キロのそこそこ大きい冬瓜を持って行ったら、子どもたちは「これ、何ですか?」と近寄ってきて興味津々。子どもたちに実際に持ってみるように促すと、「赤ちゃんみたい!」と大切に抱えたり、「思ったより軽い!」と強がってみたりと、反応は上々。中には「これ、婆ちゃんちで育てよらす!」や「婆ちゃんが漬物にしとらす」と得意げに紹介してくる子どももおり、子どもを取り巻く環境の違いも感じられた。先生の中には「はぁ、これが冬瓜なんですね。」と初めて目にする方もおられ、実物を見せることの大切さを感じるとともに、大人も知らないという現実を知ることにもなった。
最近は家族の規模も小さくなり、また家庭力も落ちてきて、冬瓜のような大きくて調理に手間のいる野菜が食卓に上る機会が少なくなっている。けれど、私たち日本人は、科学的な理屈が分からない時代から、暑い季節に冬瓜を食べると食欲がわき元気がつくと気づき、そして言い伝えてきた。そんな一つ一つの積み重ねが『和食』という文化を作り上げてきた。だからこそ、先人の知恵を決して忘れてはいけないのだ。
学校給食の現場から子どもたちへ、日本人の知恵の詰まった食文化について積極的に伝えていきたいものだ。