執筆者 : 阿部 淳委員
くまもと食・農ネットワーク会員や当サイトをご覧の皆様に、くまもと食・農ネットワーク運営委員の、日頃の地産地消に関する活動や考えをご紹介することで、皆様の更なる地産地消活動への一助にしていただくため、当ネットワークの運営委員や関係者によるリレーコラムを掲載しています。
第74回目は、東海大学準教授 阿部 淳さんです。
執筆者 : 阿部 淳
くまもと食・農ネットワーク会員や当サイトをご覧の皆様に、くまもと食・農ネットワーク運営委員の、日頃の地産地消に関する活動や考えをご紹介することで、皆様の更なる地産地消活動への一助にしていただくため、当ネットワークの運営委員や関係者によるリレーコラムを掲載しています。
第74回目は、東海大学準教授 阿部 淳さんです。

「熊本の麦作り」
新年おめでとうございます。寒い季節ですが、水田では小麦・大麦がたくましく育っています。
よく知られているとおり、日本の食料自給率は先進国の中で最低。じりじりと下がる一方というのも、他の先進国にはない特徴です。以前は1人年間120 kg(2俵)食べていたお米を、今や55 kgしか食べないために、水田の4割以上が余っています。一方、1人30 kgを食べるようになった小麦は、大部分が輸入です。
余剰水田で、大豆や小麦、あるいは飼料用のトウモロコシをもっと栽培すれば、自給率が上がる理屈です。しかし、畑作物を水田で育てると、病気や害虫、生育障害など、多くの問題が起こります。世界中の研究者達が、乾燥に強い小麦を作ろうとしている一方で、日本の研究者・農業関係者は湿害に強い小麦作りに取り組んでいます。
そうした日本の関係者達の悩みのひとつは、新しい品種を作っても受け入れてもらえないこと。製麺工場にとっては、これまでと違う品質の粉を買ったら、製造ラインの調整をし直さないといけません。製粉会社が、オーストラリアのようにブレンド技術を磨いて、品種は変わっても同じ品質の粉を作れるようにするか、新品種を大量に買い付けて安定供給しないと、いつまでも古い品種だけが買われることになります。
その点、熊本では、県内の製粉会社が新しい小麦品種を積極的に農家から買い取り、独自ブランドで販売する努力をされています。大麦も、ビール会社などによる買い取りがあり、麦の栽培から販売までの流れが、他県に比べて良好なように思います。
県内の麦畑(冬の水田)では、排水を良くするために、畝を立てたり溝切りをしたりと、手間と愛情をかけて栽培している農家が多いようで、美しい線を描いています。私が昨冬までいた関東の麦栽培ではあまり見かけない風景で、深い感銘を受けました。この素晴らしい景観を保つためにも、多くの方に県産の小麦粉を使って頂きたいと思います。