執筆者 : 藤川貴臣
くまもと食・農ネットワーク会員や当サイトをご覧の皆様にくまもと食・農ネットワーク運営委員の日頃の地産地消に関する活動や考えをご紹介することで、皆様の更なる地産地消活動への一助にしていただきたく、この度当ネットワークの運営委員によるリレーコラムを開始しました。
第5回目は、当ネットワーク運営委員の藤川貴臣さんです。
皆さん、おいしい農産物食べていますか。私は、農業を始めてちょうど20年、両親と妻、そして3人の子どもたちに囲まれて、玉名市でミカンをつくっています。
突然ですが、『食育』の目的って何でしょうか。今、小学校などで農家の人たちの話を聞いたり、また先生や地域の方の指導のもと、いろいろな作物を育てたり、様々な取り組みが行われています。収穫の喜びに触れ、好き嫌いが少なくなったり、地域の農業に興味を持ったり、なかには日本の自給率について話してくれる子もいます。そういう意味では農業を身近に感じてくれる取り組みは進んでいますが、農業をする立場からすると何か物足りないと感じるのも事実です。
買い物に行った時、「地元産のほうがいいよ。」「国産の(野菜・果物)を買おうよ。」と言ってくれる子どもたちを育てていくことを、食育の最終的な目的にしていただきたいのです。農産物を買ってもらって初めて、農業とのつながりが出来ます。なんで国産の農産物を買うべきなのか、それを教育していくことが食育の意義だと思います。
私たち農業者も今までの取り組みを反省して行かなければなりません。行政や市場にばかり訴えて、消費者に農業のことを説明して来ませんでした。その結果、農業と消費者の間に大きな溝が出来てしまったのです。経済がこれだけ低迷している中ではありますが、農産物価格の低迷は消費者の想像をはるかに超えて、農業に大きなダメージを与えています。農産物が再生産できる適正な価格で取引されない限り、日本の農地・就農者の減少に歯止めはかけられません。
その解決の第一歩が地域からの発信だと思います。地元で生産された農産物を地域との理解を深めながら消費者に買っていただく。その輪を少しずつ大きくしていくことが日本農業の再生につながって行くものだと思います。
農業は食料を生産するだけでなく、環境面も含め国土の保全など多面的な、そして極めて重要な役割を担っています。農業を支えてくれるのは国ではないんです。買っていただいている消費者の皆さんなんだということを理解していただきたいと切に思います。
これからもずっと、安心しておいしい農産物を食べていけるように。
熊本県果樹研究会 青年部部長 藤川貴臣