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くまもと食・農ネットワーク運営委員リレーコラム【第38回:小出委員】

最終更新日:
執筆者 :  小出 史

 くまもと食・農ネットワーク会員や当サイトをご覧の皆様に、くまもと食・農ネットワーク運営委員の、日頃の地産地消に関する活動や考えをご紹介することで、皆様の更なる地産地消活動への一助にしていただくため、当ネットワークの運営委員によるリレーコラムを掲載しています。
第38回は、有限会社 ソルト・ファーム 代表取締役小出 史さんです。
 

 

『究極の地産地消』~放牧あか牛~

 先日「阿蘇のあか牛・草原牛プロジェクト」の呼びかけで「放牧あか牛」の試食会が熊本市の飲食店であった。熊本県草地畜産研究所で出産し、29ヶ月育成された貴重なあか牛である。なぜ貴重かというと、冬も放牧された極めて珍しい「周年放牧」の牛であり、その牛が食べてきたのは主として「阿蘇の草」なのである。
 試食方法は、まず「焼肉」「すき焼き」「しゃぶしゃぶ」「ステーキ」と牛肉のフルコース。一言でいうと「お肉を食べたあとのギトギト感が全くなく最高に美味しかった」。しかも、あれほどしゃぶしゃぶしたのに、スープは透き通り、油のあとがほとんどない。すき焼きだって、残りの汁には油のあとがなく、さらりとしている。何しろ10人がよく食べた。5キロもの肉をペロリ。サシが入った「口の中でとろけるような肉」は少し食べただけで「ノーサンキュウ」になるのだが、このあか牛は、しつこくなく、あっさりしているため、量が食べられる。これは、参加した皆の共通の意見だった。特に、厚めのステーキより薄めのしゃぶしゃぶ、すき焼きが最高だった。おそらく、完全放牧のあか牛は、狭い牛舎で生活するのではなく、ストレスがない幸せな牛ではなかろうか・・・優しい味がするのである。
 通常、一頭の牛を出荷するまで、5トン~6トンの穀類飼料が必要だと聞いている。しかし、食料危機になった場合は、穀物飼料に頼っていけず、ひいては牛を飼育できなくなる恐れがあるという。ならば、放牧牛で美味しいお肉を食べられれば、この問題は回避できるのである。県草地畜産研究所では、今後もより一層、研究を続けていきたいとしているし、阿蘇地域の畜産農家でも、飼料から草へ切り替えていきたいという動きが生まれようとしている。
 牛と羊は、草で肉を作ることができる動物だ。阿蘇地域は、脈々と「野焼き」が続けられ、草原を維持している土地である。しかし今は、その「野焼き」が、畜産農家の減少など、さまざまな理由から「野焼き」ができにくくなっている。
ということは「草原」も減っている現実があるが、今こそ阿蘇の畜産が、産業として生き残ることが最善ではなかろうか。観光資源として草原を守るには限界があると思う。農家にとって採算がとれるような草原の維持システムを作っていくことができれば、牛たちにとっても、畜産農家にとっても、その命を頂かせてもらうわたし達にとっても幸せな結果になるはずである。つまり、それこそ「究極の地産地消」といえるかもしれない。

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