熊本県内で獲れるエビと言えば?と聞かれると、クルマエビと回答をされる方も多いことでしょう。
確かに贈答用などで、よく見かけるのはクルマエビなのですが、実はそのクルマエビに勝るとも劣らない絶品なエビがあることはご存じでしょうか?
なんでこんなに美味しいのに、認知度が高くないのか問題。
今回ご紹介する食材は、アシアカエビ。
…と言っても「あ~!あれね!」とすぐにピンとくる熊本県民はさほど多くはありません。なぜなら不知火海で獲れるアシアカエビは、地元芦北エリアもしくは関東エリアでしかいただけないという、希少なものなのです。
出荷前の冷凍処理が行われているアシアカエビ
ではなぜ限定したエリアのみの流通なのか。
それはいくつかの要因が挙げられます。
まずは、海の環境が変わってきたことだと、アシアカエビ漁を行う濵田輝久(ハマダ・テルヒサ)さんは語ります。
海水温度が上がっていることで、海中の環境が変わり、アシアカエビの漁獲量は年々減少傾向にあるのだそう。
「先日は沖縄でしか見ないような魚がここに居たんで、驚きましたよ」と語るのは一緒に漁を行う濵田さんの母、矢千子(ヤチコ)さん。
網を巻きあげる作業があるので、漁は基本的に3人1組で行うのだそう。
アシアカエビを獲るにはまず沖にでて、網を仕掛けます。
どのスポットで網を張るのかは、長年の経験から把握されています。
網を巻き上げる機械音が変わったら、そこからは全員で協力し網をひっぱりあげ...
おお!大漁!!
「いや全然大漁じゃないです。失敗」(濵田さん)
こんなに魚が入っているのに失敗とはどういうことなのか...と思いましたが、肝心のアシアカエビが入っていないから失敗なのだそう。
「海水温度もそうなんですけど、この間、大雨の災害があったじゃないですか。普通の雨なら山の土砂が海に流れ込んで栄養価が高くなるんですが、あのときの大雨は土砂のほかに大きな流木などが流れて、それが今は海底に沈んでるんですよ。それで網も損傷したし、環境が変わったなあとは思いますね」(濵田さん)
濵田さんが語る「この間の大雨」とは、2025年8月の大雨災害のこと。
県内至る所にいまだその傷跡が残っていますが、このような形で影響を及ぼしているとは想像もしませんでした。
「まあ、そもそもこのあたりは漁師自体も少なくなってきよったけんですね。アシアカエビって全国で獲れるんですが、不知火海のアシアカエビは味が濃厚で食感もいいと認識してくれるのは、熊本県内ではなく築地(市場)のバイヤーだったりするので...。自分たちも生活があるけん、そこに卸す流れになったんです」(濵田さん)
不知火海で採れたアシアカエビは、ねっとりとした甘さが特徴。
同じアシアカエビでも、他の産地のものとはまったく味が違う!ということで、関東エリアでは高い価格で取引をされ、出荷されているのです。
そのため同じ熊本県内であっても、あまり見かけることがありません。
特別に1匹、試食させていただけることに。
まず最初の一口目で誰しも驚くのが、この弾力。
よくエビを表現する比喩として「プリプリ」という言葉が使われますが、アシアカエビに関してはプリプリを通り越して、ブリンブリン。
奥歯でしっかりと噛み切らなければ持っていかれるほど、強めの弾力。
そして噛みしめると瞬時に口内には、ねっとりとした甘さが広がります。
これは高値で取引される訳だ。こんな美味しいものがこんなに身近にあるとは意外でした。
いや...食べたいんだが?
こんなに美味しいのに、熊本県内ではあまり流通をしていないアシアカエビ。
関東エリアでは高値で取引されるほど評価されているのに、地元の熊本県民が食べる機会がないって、そんな悔しいことはありませんよね。
ご安心ください。
美味しくいただけるお店、そしてアシアカエビを購入できるお店を一挙にご紹介します。
芦北町 味富家(みとや)
佐敷駅の斜め向かいに位置する「味富家(みとや)」。
アシアカエビ料理を堪能できるお店として評判なのですが...
現在はアシアカエビをいただくには完全予約制となっています。
漁獲量の問題もありますし、ここは仕方がないところですね。
<刺身定食 1,600円(税込>
ご覧ください!この美しいお刺身たち。もちろんアシアカエビも鎮座しております。
関東エリアでは高級魚とされる鱧(ハモ)も小鉢でついてきます。
これでこのお値段(1,600円)は破格!
地図はこちら
(外部リンク)
芦北町 さるかに合掌亭
同じく芦北町にある「さるかに合掌亭」。
不知火海の目の前にあるお店なので、天気が良ければ海を見ながらお食事をいただけるお店です。
こちらでいただけるのが...
<足赤エビ天丼 1,500円(税込>
立派なアシアカエビをふんだんに使った天丼。
この大きさがお分かりでしょうか。
決して衣が厚いのではないのです。エビそのものが大きいのです。
生でいただいたときの食感は「ブリンブリン」でしたが、火を入れるとまるで伊勢海老を食べているかのような食感に変わります。
地図はこちら
(外部リンク)
芦北町 みやもと海産物
芦北町にある「みやもと海産物」では、冷凍されたアシアカエビの加工品が販売されています。
手軽にいただける、ご飯の素などがあるのでお土産としても重宝しますよ。
地図はこちら
(外部リンク)
津奈木町 平国丸(ひらくにまる)
今回、アシアカエビの漁にご協力いただいた濵田さんが経営する「平国丸(ひらくにまる)」では、インターネット限定ですが販売を行っています。
特におすすめなのは自家製の味噌で漬けたアシアカエビの味噌漬け。
1匹がこんなにも大きいので、贈答用としても活用される方が多いのだそう。
自然相手の商売ですので、なかなか量を確保するのが難しいものの「ここの味噌漬けじゃないと」と言ってくださるリピーターの方のため、一生懸命作業をされておられます。
購入先はこちら
https://hirakunimaru.shop/
熊本県内に居住していても、食卓にあがる機会が少ないアシアカエビ。
しかし一度食べたら「ちょっと芦北まで行かなん!」と思ってしまうほどクセになる甘さと弾力でしたよ。
ぜひ一度足を運び、美しい不知火海を眺めながらアシアカエビに舌鼓を打ってみてはいかがでしょうか。