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くまもと食・農ネットワーク運営委員リレーコラム【第18回:小出委員】

最終更新日:

 

第18回の1
執筆者 :  小出 史

くまもと食・農ネットワーク会員や当サイトをご覧の皆様に、くまもと食・農ネットワーク運営委員の、日頃の地産地消に関する活動や考えをご紹介することで、皆様の更なる地産地消活動への一助にしていただくため、当ネットワークの運営委員によるリレーコラムを掲載しています。
 第18回目は、この夏、残暑の続く熊本を思い切って脱出、ドイツのシュタイナー農法やオーガニックの現状を訪ねた、当ネットワーク運営委員の小出 史さんです。
 

訪れたチュービンゲン市の朝市(週3回昼過ぎまで)花や野菜が並ぶ

訪れたチュービンゲン市の朝市(週3回昼過ぎまで)花や野菜が並ぶ

  ヘルマンズドルク農場の直売所のドアにも「豚に真珠」が・・・。

ヘルマンズドルク農場の直売所のドアにも「豚に真珠」が・・・。

 

「おらが村が一番!!」

 

「あれが、ここチュービンゲンで一番大切な建物、ザルツハウス(塩倉庫)よ!」と、ドイツ一の大学都市チュ―ビンゲンで暮らす執筆家、森 恵さんがにっこり微笑み、教えてくれる。戦争での空爆を受けなかったチュービンゲンの街には15~16世紀建物が立ち並ぶ。中でも、ザルツハウス(塩倉庫)は1579年に建てられ、戦時中、倉庫に備蓄されているお塩と穀物が市民の生活を安心させた。その象徴のように街の真ん中に存在し、今も市民の集会場として使われている。「小出さん、ドイツはどこの町に行ってもザルツハウスがあるし、引越し祝いには塩とパンを贈る風習があるのよ。塩とパンは生きていく上でなくてはならないもの、毎日の食べ物に事欠かないようにっていう意味なの・・・。」と旅の案内人、森さんは話してくれた。
 私が天草・通詞島の手仕事の塩を紹介するアンテナショップを開いたのは11年前。イルカが泳ぐ豊かな海と太陽と職人たちの愛情いっぱいの自然海塩。この天草の塩こそが私を救ってくれた。当時、放送局の仕事が重く圧し掛かり、体調も悪くなり気持ちも塞ぎ込むようになった私を、あの海が、あの海と向き合う塩づくりが、本来の私を取り戻すきっかけを作ってくれたのだ。
さて、開業以来、旅らしい旅ができなかった自分へのプレゼントとして、この夏、ドイツとオーストリアの田舎町を訪ねた。「ドイツの食」と言えばビールやハム、ソーセージ。ワインも、その土地ならではの地ワインが楽しめる。
「○○地方のワインを飲めば胃に穴があく」「俺は○○地方のワインを飲めば胃が塞がる」と隣町同士が言い合う。つまり「おらが村のワインが一番だぜ!」と地元が地元を盛り上げる。
週3回開かれる市場には、地元でとれた「朝露がついたまま運び込まれる」色とりどりの野菜が並ぶ。生産者同士がしゃべりながら、何やら食べながらのんびりとお客を待って入る。地元の人々は「買い続けることで支えよう」という意識が強いし、生産者にとっては、現金収入が得られる市場は卸価格よりも高値で売れるから、北アフリカへバカンスにも行ける。お客が多く売り上げが上がっているとは、とても思えないが、うらやましい限りだ。
ドイツ連邦共和国は、1990年の東西ドイツ再統合によって、人口8200万人、16の州で構成される国だ。日本と違い、地方主権体制が取られ、それぞれ独自の憲法や法律を持ち「おらが国、おらが街」意識が強い。先進工業国であると同時に農業国でもあり、国土面積は日本よりやや小さく、約半分が農牧地だ。
 多くを学んだ中で、ミュンヘン郊外にある「ヘルマンズドルフ」の取り組みには驚かされた。26年前までは全ヨーロッパに販路を持つ食肉加工の大量生産型工場経営だったが、180度方向転換し、農牧畜から食肉加工・販売までを一貫したエコロジカルなシステムで行っている。家畜の生活行動を制限しない広さを確保することで、ストレスを与えない生活環境をつくり、さらに牛も豚も他からの買い入れ飼料ではなく、農地内で生産された自家製を食んで育つ。
生産、加工、流通の短距離内のネットワーキング、近隣農家の生活保障も考え、
そこで獲れた物をその場で加工すれば、余計なものを添加せず新鮮で美味しいものを消費者に届けられるわけだ。在来種の豚を飼育し、伝統的な食文化の再生を行っている。農場には、親子連れも遊びにやってくる。動物たちとふれあいながら「食べ物はどこからくるのか、どのようにつくられるのか」を自然と学んでいく。さらに、気持ち良く働くには「芸術」が必要であるという「シュタイナー農法」を取り入れ、至る所にさりげなく彫刻などの芸術品が置かれている。こちらの地ビールのラベルは「豚に真珠」。日本のことわざの意味ではなく「私たちは豚に真珠をかけますよ」と敬意を払った写真だ。
 他にもさまざまなオーガニックマーケットなどを視察したが、ドイツには生産者支援の流通が整っていること、お客様第一主義の日本と違って、お客と店とが対等な立場「売ってやる、買ってやる」ではなく「作ってね!売ってね!」という感じだった。
 それにしても、9月上旬のドイツの空気はなんて美味しかったことだろう!持って帰れなかったが、心のこりである。

                                         
                  有限会社「ソルトファーム」代表取締役  小出 史

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