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くまもと食・農ネットワークリレーコラム【109回:阿部 淳委員】

最終更新日:
 

阿蘇の「あか牛」

 

東海大学 農学教育実習センター 阿部 淳

 

 さる6月24日(日曜日)に、びぷれす熊日会館で、東海大学主催の「農学部基礎講座 あか牛コース」が開催されました。岡本智伸農学部長とリストランテミヤモトの宮本健真さんを講師に、市民の皆さんに、楽しみながら阿蘇の草原と「あか牛」について学んで頂くという企画です(写真)。

 和牛には黒い牛が多いなかで、阿蘇のあか牛は「褐毛和種(あかげわしゅ)」という茶色い毛並みの牛です。世界農業遺産にも指定されている阿蘇の広大な草原で、草をはんだり、のんびり寝そべったりという姿を思い浮かべる方が多いと思います。

 阿蘇の春先の風物詩である野焼きも、あか牛の夏の放牧と、冬越しの餌となる草の確保のために、林になってしまわないよう、火を入れることで草原の状態を保っています。結果として、阿蘇の独特の景色が広がり、草原には稀少な草花や昆虫が生きています。

 2016年4月の熊本地震では、阿蘇の山々も地盤が崩れた箇所が多く、野焼きにも影響が出ました。草原自体に地割れができたところもありますし、そこに至る道路が崩れたままのところもあります。野焼きでは、延焼防止のために多量の水を使います。軽トラなどに水を積んで行きますので、道路が崩れた先では野焼きも実施できません(写真)。

 もっとも、野焼きができても、草が利用されているとは限りません。これは地震以前からある問題ですが、あか牛といいながら、黒毛の和牛と同じように厩舎に閉じ込めて輸入トウモロコシを大量に与えて飼われている牛も多いのです。狭いところで運動不足で、カロリーの高い餌を多量に食べる・・・・・人間のメタボを連想させる話ですが、こうした飼い方のほうが、いわゆる「霜降り肉」になって売値が高くなるからです。広い牧野を手入しながら飼うよりは、厩舎のほうがまだしも労力が小さくて済むという理由もあります。

 本来の野焼きは、夏の間に牛が草を食べた跡や、冬越しの餌用に飼い主が草を刈り取った跡で行っていました。そのため、燃えるのは切株で、ちょろちょろとした炎になります。今どきの野焼きは、ぼうぼうと派手に燃え盛って見た目には楽しいのですが、あれは草が使われずに無駄になっているのです。

 東海大学農学部では、冬も含めて、あか牛を野外で放し飼いにする周年放牧に取り組み、草で育ったあか牛を「草原あか牛ecobeef ASO」としてブランド化することを試みています。冒頭の市民向けの講座も、そうした活動の一環です。草を食べて育ったあか牛の赤身肉には、霜降り肉とは違ったおいしい食べ方があることも、学んで頂きます。

 より多くのかたに、あか牛が阿蘇の環境と密接に関わっていることをご理解いただけたらと思っています。

 

写真1 市民向け講座であか牛について語る宮本健真さん

写真2 野焼きができず前年のススキの古株が残ったままの草原

 

 講演草原
              写真1                             写真2 


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