全国の焼き物には「有田焼」や「波佐見焼」のように「○○焼」という名称がついていることがほとんどです。
では、熊本県ではどうでしょう? 気になって調べてみると「天草陶磁器」という言葉に行き当たりました。
天草で作られていることは分かりますが、なぜ「天草焼」ではないのでしょうか。銘菓である「大漁焼」と紛らわしいから避けたのかな…?
モヤモヤしたので、真相を確かめるべく天草の窯元へ突撃取材してきました!
目次
1.なぜ 「天草焼」がない?
2.陶器と磁器、どっちも作るから「天草陶磁器」
3.個性あふれる3つの窯元をめぐってみた
4.統一されないことの贅沢さ
なぜ「天草焼」がない?

天草は、焼き物の原料になる「天草陶石」がめちゃくちゃ採れる場所。
あの平賀源内から「天下無双の上品」と絶賛されたほどで、今でも全国シェア約8割を誇ります。
有田焼や波佐見焼などの有名産地も、実は天草の石を使っているんです。
そんなこと聞いたら思いますよね。
「そんなにすごい原料があるなら、天草が本気出せば天下を取れるのでは?? なんでそんな謙虚なの??」と。
もちろん天草にも窯元はたくさんあります。でも名前は「天草焼」ではなく「天草陶磁器」。
そう、「陶器」と「磁器」の両方が合体した名前なんです。
「陶器」と「磁器」この2つが合わさった名称になったその理由は、天草にはそれぞれ全然違う個性を持つ窯元があるためなのです。
陶器と磁器、どっちも作るから「天草陶磁器」

そもそも「陶器」と「磁器」の違いをご存じでしょうか。大まかに言うと陶器は粘土(土)、磁器は陶石(石)が主原料です。
手触りも見た目の質感もまったく異なります。
有田焼などの大産地は、分業制で作ることが多いのに対し、天草では材料の採取から成形、焼き、販売までを小さな工房や職人ひとりで手掛けるスタイルが主流。
そのため、各窯元の個性が尖りまくっています。
陶磁か磁器、どちらか一本に絞るメリットもないし、何より「一つの〇〇焼という名前に統一したら、それぞれの窯元が積み重ねてきた歴史を否定することになってしまう」という思いがあるのだそう。
つまり、それぞれ違うことこそ、天草の焼き物の特徴であり、「天草陶磁器」ということなんです。
個性あふれる3つの窯元をめぐってみた
「各窯元でまったく個性が違う」と言われても、百聞は一見にしかず。実際に3つの窯元にお邪魔してきました。
高浜焼

まず訪れたのは高浜焼。

透きとおるような白磁に、澄み切った天草の海を思わせる「天草ブルー」の絵付けが映えます。

<お猪口の中には立体的なイルカが!>
デザインの可愛さはもちろん、手に持った時の収まりが絶妙。「観賞用じゃなく、普段使いでストレスなく使ってほしい」
という計算し尽くされた設計を感じます。

事前予約で絵付け体験もできたので挑戦。

「何を描いていいのか分からんよ~」という方もご安心を。
イラスト集があるのでそれを参考にするといいアイディアが生まれてきますよ。

たまたまあったプロの絵付師さんが描いた作品が美しすぎたので、そのまま真似をするも,..

努力の甲斐むなしく、似ても似つかぬ作品を生み出してしまいました。

しかし後日、送ってもらった完成品はそれっぽい感じに仕上がりました。結果、大満足。
丸尾焼


続いては「20年使ってもらえる器」がコンセプトの丸尾焼。

店内には陶器も磁器もずらりと並び、なんとカフェまで併設されています。
中には「...これ!!このカップをください!」とオーダーが入ることもあるのだそう。
確かに、使ってみて初めて「運命の出会い」ってありますよね。

驚いたのは客層の幅広さ。老若男女はもちろん、海外観光客、若いカップルが普段使いのお茶碗を探しに来たり、果てはミシュラン掲載店のシェフが仕入れに来たり。すごい空間だ…!

丸尾焼でも絵付け体験可能でしたよ!(要事前予約)
水の平焼

最後に訪れたのは、天草陶磁器の元祖ともいえる水の平焼(みずのだいらやき)。

歴史ある窯元なんです。

ここは土もの(陶器)ならではの温かみを感じる製品のほか、磁器作品も販売されています。

デザイン性に富んだものから

土もの(陶器)に加え、磁器も温かみを感じる製品がズラリ

独特の釉薬(ゆうやく)が生み出す独特のグラデーションが美しく、スタイリッシュなものから素朴なものまで多種多様。
ひとつひとつ表情が違うので、眺めているだけであっという間に時間が溶けていくよう。
統一されないことの贅沢さ

「なぜ天草焼がないんだろう」という素朴な疑問から始まった今回の旅。「どちらか一本に絞ったほうがいいのでは」なんて考えていた自分が恥ずかしくなりました。
天草の器は、単なる「皿」というモノだけを売っているわけではありません。
豊かな土地、上質な原料、職人の手仕事、そして使う人の暮らしまでを含めた「最高の食体験」を届けているのです。
100円均一や量販店の器も便利ですが、職人のプライドが宿る一点ものの器に天草の旬の食材やいつもの料理を盛り付けるだけで、食卓の景色がパッと華やぎます。
地元の職人さんを「買って応援」、そしてお気に入りの器で美味しいご飯を「食べて応援」。
そんな循環が生まれたら素敵ですよね。
そして現在、令和8年熊本地震の被災地を支援するため、県内の特産品の購入やアンテナショップなどの利用を通じて「買って応援」「食べて応援」する取組みが広がっています。
詳しくはこちら

https://kumamoto.guide/topics/detail/537
(外部リンク)
また今回ご紹介した天草陶磁器の魅力を体感できるイベントが今年も開催されます。

出典 天草大陶磁器展
(外部リンク)
熊本県内はもちろんのこと、県外のファンからも熱い支持を集める恒例イベントです。
ぜひ、自分だけの「運命の一品」を探しに、出かけてみてはいかがでしょうか。
おまけ
別のスタッフも高浜焼と丸尾焼それぞれの絵付けにトライしてみました。
学生ぶりの絵付けで手が震えました。(;゚Д゚)
〈高浜焼の焼き上がり〉
〈丸尾焼の焼き上がり〉