くまもと食・農ネットワーク会員や当サイトをご覧の皆様に、くまもと食・農ネットワーク運営委員の、日頃の地産地消に関する活動や考えをご紹介することで、皆様の更なる地産地消活動への一助にしていただくため、リレーコラムを掲載しています。
第99回目は、熊本県立大学 教授 南 久則委員です。
「熊本産でフレイル対策」
熊本県立大学で管理栄養士の養成に携わっています。栄養に関連する分野の教育・研究を長く続けてきましたが、栄養学研究のテーマは時代とともに変わってきました。
「エネルギー・栄養素の不足(低栄養)」→「エネルギー・栄養素の過剰(過剰栄養)と生活習慣病対策」→「エネルギー・栄養素の過剰と不足の混在」、のようになるのでしょうか。
エネルギー・栄養素の過剰摂取よる肥満や糖尿病などの生活習慣病は栄養の重要な問題ですが、一方現在では、高齢化社会が進み、脳梗塞等の後遺症による食事摂取の障害や、不足による低栄養が非常に重要な問題となっています。今回は、低栄養と関連する「フレイル」という言葉を紹介します。
フレイルとは、「Frailty(フレイルティ)」の訳で、「虚弱」、「老衰」、「脆弱」などの意味で、健康な状態と介護状態の中間を意味します。高齢者は特にフレイルが発症しやすく、フレイルに早く気付き、正しく治療や予防をすることが大切です。フレイルの状態では、死亡率の上昇、身体能力の低下、病気にかかりやすくなる、寝たきりになってしまうなどが起こりやすくなります。
フレイルの定義(Fried ら)は、(1)体重減少、(2)主観的疲労感、(3)日常生活活動量の減少、(4)身体能力(歩行速度)の減弱、(5)筋力(握力)の低下とされ、5項目のうち3項目以上該当するとフレイルと判断されます。フレイルの原因は、(1)加齢、(2)身体機能低下(歩行スピードの低下)、(3)筋力低下、(4)認知機能低下、(4)易疲労性や活力の低下、(5)慢性的な管理が必要な疾患、(5)体重減少、(5)低栄養、(6)収入・教育歴・家族構成などです。特に低栄養、身体機能の低下、慢性的疾患により筋肉量・筋力が減少(サルコペニア)すると、エネルギー消費量が減少し、食欲低下・食事摂取量の減少につながり、さらに低栄養が進展します。フレイルに早く対応することができれば、フレイルから健常に近い状態へ改善され、要介護状態への移行を減らせる可能性があります。
さて、フレイルの紹介を長々と書きましたが、熊本の農産物を活用しフレイルに打ち勝つ食品、献立の開発ができないかと考えています。嚥下障害のある方、食事量の確保が難しい方などに、無理なく栄養補給できる食品や献立の素材が熊本にはまだまだ隠れていると思います。ぜひ、熊本発のフレイル対策を盛り上げましょう。