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くまもと食・農ネットワーク運営委員リレーコラム【第19回:小出委員】

最終更新日:

 

【種を分かりやすく紹介】
執筆者 :  小出 史

くまもと食・農ネットワーク会員や当サイトをご覧の皆様に、くまもと食・農ネットワーク運営委員の、日頃の地産地消に関する活動や考えをご紹介することで、皆様の更なる地産地消活動への一助にしていただくため、当ネットワークの運営委員によるリレーコラムを掲載しています。
 第19回目は、前回に引き続き、オーストリア・ウィーンへ「ほんとうにおいしいものを訪ねる旅」、に向かわれた当ネットワーク運営委員の小出 史さんです。
 

 

 

【種を分かりやすく紹介】     第19の2

                          【種を分かりやすく紹介】                【農場宿泊したシュタインニンガーご夫妻と】

 

「おらが村が一番!地元はおいしい、地元は楽しい」

 

 私たちは、ドイツ、ミュンヘンから列車で4時間、音楽の都オーストリア、ウィーンへ向かった。オペラ座で音楽でも・・・という気分になるが、今回のテーマは「ほんとうにおいしいもの」を訪ねる旅。ということで、ウィーンから高速道路アウトバーンを走ること2時間近く、オーストリア北部の小さな町、ツヴェットル市に到着したのは、すでに暗くなってからだった。その日から
3泊、有機農業を営むシュタインニンガーさんの宿泊施設にお世話になった。
ところで、オーストリアの人口は約820万人。9つの州から成り、地方色の濃い、ちょっと古めかしいと思えるような生活様式が、今も守られている。国土は北海道と同じくらいで、その4割が農牧地として利用される農業国であり、良質なワインの生産国でもある。1990年代初めから国のオーガニック農業振興政策がスタート。2003年には、個々に活動していた国内12のオーガニック農業推進団体が終結してBio Austriaを設立、14000農家が加盟しEUのエコ食品基準を越える生産基準を策定している。地産地消志向はもともとあったが、国の「地元はおいしい」キャンペーンが後押ししている。 
さて、そんなオーストリア、ツベェットル市での初めての朝、窓を開けると美しい田園風景が広がっていた。ベランダは花で飾られ、台所からはパンの焼ける匂い、シュタインニンガー夫人は笑顔で朝ごはんを用意している。「このゆで卵、今朝の生みたてよ!」と用意して下さった卵の美味しいこと!絶妙なゆでかげんだし、もちろん携えていたソルト・ファームの天日塩「なんば塩っと」(携帯用)を少しふりかけると、さらに卵の味が引き出される。
実は、シュタインニンガーさんは20年前に両親の跡を継ぎ農業をはじめた。現在、鶏の飼育と畑作を行っているが、10年前にオーストリアの有機認証を取得。鶏の健康状態も含めて欠かさず日誌をつけているし、水質調査や抜き打ち検査も行われるそうだ。2000羽の鶏は、朝夕合わせ4000個の卵を産む。卵には一つ一つ生産番号が印字され、スーパーや病院、レストランやホテルに卸している。殻のみ変形しているのは、パン屋さんに持っていっている。鶏たちは、自家生産のオーガニック飼料を食べ、お散歩もしている。外には好物のジャガイモがまかれていて嬉しそうだ。夕方になると小屋に入り、オーストリアの有機農法で義務付けられている伝統的な麦わらの上で(3日に一回取り替える)卵を産む。なんて幸せな鶏たちだろう。幸せな鶏たちの卵を「明朝もぜひ!」とリクエストした。
 美味しい卵で元気づいた私たちは、20年前から活動を続けている団体「アルヒエ・ノア」の農園を訪ねた。この農園は、農業関係者やジャーナリストたちが種の多様性の危機を感じ設立、昔からあった種を大学や研究所などと連携し再生しようとしている。民間の活動で6000種苗の記録を作り、会員が作っている花や野菜などをカタログで紹介し、直接注文できるようにしている。ブラックトマトやグリーントマトなど実が生るものから、多種類のハーブも植えられているし、根っこや種の見せ方も工夫が施され、分かりやすいように紹介していた。
 さらに、ツベェッテル市にあるオーストリアを代表するオーガニック製品メーカー「ゾンネントーア社」も訪ねた。お茶や香辛料、食品やボディケア商品が、ひと目で分かる素敵で無駄のないパッケージに包まれている。今から22年前、たった一人の青年が3軒のお茶(ハーブ)農家と契約したことが始まりだった。今や地元の150軒の農家と契約し、世界40カ国、600種類の商品を生み出している。
 そのゾンネントーア社の「幸せな気分になるお茶」を飲みながら、今回の旅を振り返ってみた。一言で表せば「それぞれの命を大切にしている」ということだろうか・・・印象に残ったのは、豚やニワトリたちが元気で伸び伸びしていたこと。オーガニックの飼料を食べさせ、散歩をさせることで心身の状態を良くしている。その命を私たちは頂いている。また、内部は接ぎ木だらけだが、先人たちの建物を修復しながら大切に使っている。歴史の記憶を残し、伝えていき、それを受け止めていく・・・真の豊かさと命の連なりを感じた旅であった。そして思う。緑と水、自然に恵まれた熊本は、人も動物も心から豊かになれる要素はいっぱいだし、私たちの意識さえ変われば「おらが村は一番!地元はおいしい、地元は楽しい」と胸張って言えるのではないかと・・・。
                                                                       

                                                                             有限会社「ソルトファーム」代表取締役 小出 史

 

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